冷たい雨の降る三月某日。
外の寒さとは対照的に熱気あふれる稽古場。
脚本・演出の大和田さんはロジカルに演技をつけていき、そしてそれに応えるように内面からキャラクターを演じようとする俳優たちの姿がありました。
その光景を鋭いまなざしでみつめるのは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』監督の谷口悟朗さんとシリーズ構成の大河内一楼さんのお二人。
『コードギアス』をゼロから作り上げた谷口&大河内両名と、『コードギアス』を舞台化させる大和田さんが、脚本完成後、初めて顔を合わせました。
※本編のネタバレには触れておりませんので、安心してお読みください。
騒乱 前夜祭は『コードギアス』が好きなら
充分入っていけるつくり。完成が楽しみに
谷口悟朗監督
- ――大河内さんと谷口監督は今日、稽古をご覧になったそうですね。
- 谷口 いやぁ、稽古を見て、すごく完成が楽しみになりました。
- 大河内 僕も、すごく楽しかったです。お芝居の稽古というものを見るのがそもそも初めてだったので、「こうやってやるのか」というところから驚きでした。役者さんもキャラクターのイメージにぴったりの方ばかりで、衣装を着ていないにもかかわらず、「あ、あれはC.C.だ」(笑)とわかるようなたたずまいがありましたね。
- ――大河内さんは、小道具のゼロの仮面かぶってみたとか?
- 大河内 かぶりました。よくできていました。あれをかぶっていると、いろんな悪事ができそうな気持ちになっちゃいますね(笑)。
- 谷口 大和田さん、今回の舞台はクラブハウスの「一階の出来事」と「二階の出来事」が並行して起きるところがありますよね?
- 大和田 はい。ありますね。
- 谷口 私、台本を読んだときは「これ、どうやって稽古するんだろう」と思っていたんですよ。そうしたら今日、前列と後列に分かれて稽古をしていて「なるほど」と思ったんですが、逆にいうと演出家は、同時に両方の役者の動きを見なくてはいけないわけで、これ、結構大変なんじゃないかと思いましたが。
- 大和田 そうですね。さすがに一度には見切れないので、今日稽古した同時のものとは別に、一階のほうと、二階のほうと別々にやって芝居をつけての稽古は必要になりますね。その上でまた組み合わせて稽古することになります。
僕がやってもSTAGE9とSTAGE10の間の話になります。
大河内一楼
- ――大和田さんは今回の『コードギアス』の舞台化企画を引き受けるにあたって、どういうふうに舞台化しようと考えられましたか?
- 大和田 まずTVシリーズを全話見せていただいて、全体のストーリーをダイジェストでやるのは絶対無理だ、というところから始まりました。どうしようか、と(笑)。その後アニメ本編以外に、CDドラマなど、作品の世界観を守りつつオリジナルの物語を作っているものがあるということを知りまして、それならばオリジナルストーリーで演劇的な見せ方ができるかなと考えるようになりました。
- 大河内 僕も、舞台にするのは大変なんじゃないかと思ってました。要素は多いし、ナイトメアフレームは出るし(笑)。皇帝になるまではとても入らないだろうし。
- 大和田 ははは。そうですよね(笑)。
- ――今回の『騒乱前夜祭』は第一シリーズのSTAGE9とSTAGE10の間に入るエピソードです。
- 大和田 『反逆のルルーシュ』は非常にドラマチックなので、ドラマが本格的に動き出してしまうともうサイドストーリーを入れられる余地がないんですよね。途中に物語を入れられるところを探していってSTAGE9とSTAGE10の間にいきつきました。
- 大河内 わかります。僕がやってもそうなりますよ。STAGE8にならないと黒の騎士団が出てこない。STAGE11以降になると、シャーリーのお父さんが死ぬエピソードになっちゃうので、シャーリーが記憶を失ってしまう。ほんとにここしかないんですよ(笑)
- 大和田 はい。ただ途中は途中で苦労もありまして、STAGE9までの状況は引き継いでいますし、後のストーリーに影響してしまうので主要なキャラクターにはギアスはかけられない、とか縛りはどうしてもでてきてしまいますしね。
- 谷口 最初に脚本を拝見した時、ずいぶんとアニメに気を遣ってくださったなぁと思いましたよ。とはいえ、アニメ寄りだけではないオリジナル要素もきちんとあって、ここに照明や音響効果など、舞台ならではの演出効果が加わるわけですから面白いですよね。ナイトメアも楽しみです。
- 大和田 ナイトメアフレームについては、やはり楽しみにしているファンの方がいるだろうからなんらかの形で登場させるということは最初から決めていたんですよ。その中でお客さんがいちばん納得してくださるであろう方法を考えました。
- 谷口 実は、先日写真で作りかけのナイトメア見せていただいたんですけど、思った以上の出来映えで。シリーズでナイトメアを描いてくれていた中田栄治さんもそれを見て、ずいぶん楽しみにしていましたよ。
描きたかったのは、負けず嫌いのルルーシュを軸にした
各キャラクターの心の綾が錯綜するところ
大和田悟史
- ――大和田さんは、今回の『騒乱 前夜祭』で、どのような舞台を作りたいと考えてらっしゃるんでしょうか。
- 大和田 『騒乱前夜祭』には、アクションだとか、ナイトメアフレームだとかの仕掛けもあります。でも今回僕が『騒乱前夜祭』で描こうとしているのは、実はものすごく細かいことなんです。今回はアッシュフォード学園を舞台にしたシチュエーションコメディなので、非常に負けず嫌いのルルーシュという主人公を軸に、各キャラクターの心の綾が錯綜して、大騒ぎに――。そういうおもしろさをちゃんとちゃんと出したいと考えて、今、稽古をしているところです。
- 大河内 大和田さんのチームによる別の舞台を拝見させてもらったらとても楽しかったんです。なので今回も絶対楽しくなると信じてます。
- 谷口 今まで舞台や芝居を観た事がない方も、『コードギアス』が好きなら充分入っていけるつくりだと思います。肩肘はらずに劇場に足を運んでいただけたら、これをきっかけに舞台のおもしろさを知ってもらえるのではないかと思います。
- 大和田 ありがとうございます。『コードギアス』を好きな方には楽しく、『コードギアス』をよく知らない方にも「おもしろい」といっていただける舞台を目指して、一生懸命作っているところですので、是非劇場に足を運んでいただければうれしいです。
- ――ありがとうございました。
いかがでしたか?
今回の鼎談の完全版は公演時に販売されるパンフレットに掲載されます。
舞台をご覧になった後でじっくりお楽しみください!
聞き手:藤津亮太